いままやさしくされすぎていたのだと思う。

障害を持つことが世のルールに従わないことの免罪府にはならない。というのはおそらくほとんどの方が考えていらっしゃることのように思います(根拠はないですが)。差別的なルール、というのも確かにありますが、多くの乗客の安全を守るための処置を、これは人道上の問題、差別と言い切るにはそれ相応の理論武装、少なくとも安全上問題ないことの証明が必要なのではないかと思います。

私個人の見解としては…悪いのは、客室乗務員と記者。
客室乗務員の立場で、梅田母娘を降ろすなど(ましてや警官を使って降ろすなど)もってのほか。むしろ、乗客へ理解を求める配慮を示すべきだったでしょう。泣き叫ぶのが幼児だったらオッケーで、障害者はダメ…というのであれば、明らかな差別です。
あと、記者については、粗略な記事によって、読者の誤解を招いたうえ、取材対象の梅田さんに迷惑となる波紋を呼んでしまった責任がありますよね。「しっかり締めずに」という箇所を、「締めていない」と読み取られる可能性は、確かにあります。

梅田伊津子さんにお話をうかがっていただきました - S嬢 はてな

山ほど突っ込みどころがあるのですが・・・
・客室内で起こった問題を解決する責任は当然客室乗務員にあります。他の乗客は関係ありません。乗客すべてがこの母娘に同意したとしても乗務員がだめといえばだめです。ちゃんとチーフパーサーが対応しているのですから、問題ありとまではいえないと思います。
・空港警察は、航空会社のパシリではないのですから、警察が母娘を下したということは機内迷惑行為があったと警察が判断しているということでしょう。
・シートベルトは、決められた通りしっかり閉めていなければ閉めていないのと同じで所定の安全を確保できません。だからここを詳細に書かなくても記者の落ち度ではありません。意味は同じですから。
・「幼児だったらオッケーで、障害者はダメ」障害者を一人前の大人とみなすことがいけない?・・・もう、いいか。多分そういうつもりで書いたのではないのでしょう。

客室乗務員や記者を「もう少し配慮すべきだった」とはいえるかもしれませんが、悪意を持って接していたとは思えません。

また、梅田さんのお嬢さんの「声」が、警官を呼んで降ろさせるほど「危険なもの」だったのか。飛行機の運航に危険をきたすほどのものだったのか。ポイントはここでしょう。

梅田伊津子さんにお話をうかがっていただきました - S嬢 はてな

ここもやはり同意できないところ。おそらく航空会社が乗せられないと判断したのはお母さまの方で、娘さんは介護者がいなくなってしまうと一人で乗れないからとばっちりを受けたに過ぎないと思います。
確かに大きな声を出していたから乗せられないと判断した可能性もありますよ。他の乗客からの苦情が激しいとか、客室内放送の最中も大きな声を出していたとか。ただ、それなら過去に何度も拒否されているはずですから、可能性はずいぶん少ないんじゃないかと思いますけど。
救命胴衣の装着方法の説明中も静かにしていないとすれば、これは降りろといわれても仕方ないと思いますが、そこまでは書いていないし、そうじゃないんだと思いますが、ちゃんと説明するべきでしょうね。

お母さまを下すべきと航空会社や警察が判断したと僕が思う理由は、まずは乗務員の指示に従わないこと。他の乗客の安全を脅かしていることに対する配慮がまったくないこと。出発遅延について謝罪するよう警官が促しているところからです。母親は障害者ではないのですから、乗務員の指示に従わなくていい理由は1%もありません。仮に指示が不服でも、その場は収めてあとで正当な抗議をするべきです。この母親は毎日の記者が来る前に航空会社に抗議していたわけじゃないんでしょ?
航空会社側が差別をしたと考えているのではなく、もう少し相互に配慮すべきだったとおっしゃっているように僕は思うんですけど。




この記事がオープンになったことで、障害者とそのご家族もつらい思いをされることもあると思いますが、航空会社で、最前線で働いている方も困っていらっしゃるんじゃないかと思います。

これまでのフライトでは、梅田さんが離着陸時に押さえていることで問題はなかったとのこと。

障害者に限らず、お年寄りや妊婦さん等には客室乗務員に近い個所に座席を割り当てたり、一般客より先に搭乗させたり等のことは、どの航空会社でもしていると思います。機長と相談して、天候をチェックしてフライト中にシートベルトを付けなきゃならないほどの揺れがあるかどうかも確認したうえで、結果的に乗れたのだと思います。747や777クラスであれば機体も大きく乗務員の数も多いので対応も柔軟にできますが、ローカル線の小さな飛行機では揺れも大きく、乗務員も少ないので無理はできない。ということもあると思います。
目に見える形で手をさしのべる方だけを「親切な人」と見なして、そっと影から、他の人と同じようにふるまえるよう努力されている方の親切に気づかない人生を送るのは、これはずいぶん寂しい話だと思います。



航空会社にちゃんとしたルールがないことが問題、とブログ主はおっしゃっていますが、明文化したルールを作るとなると、どうしても安全サイドに倒したルール、例えば「シートベルトをきちんと閉められない乗客は理由の如何をとわず乗せない」なんてことにもなりかねません。「ルールに触れていないのだから乗せるべき」と主張する人は確実にいますからね。

そうなったら、いままでこの母娘の方にも空の旅を楽しませてあげたいと努力なさった過去の搭乗便の乗務員の方の努力も無駄になってしまう。
障害の有無に関係なく、乗客が安全な旅ができるのは、そこで働く人々の不断の努力があるからで、それを忘れてしまった人は「招かれざる客」といわれても仕方のないように思います。


以下、メモ。

確かに航空会社の取った方法は配慮が欠けているように見える。しかし、これはあくまでも業務上の配慮が足りなかったのであって、「障害者を差別」などといった人道的レベルではないと感じている。

【今日のブログ】搭乗拒否された知的障害者を巡って (2008年6月30日) - エキサイトニュース

6. サウスウェスト航空より。「サウスウェスト航空245便、タンパ行きにご搭乗ありがとうございます。シートベルト着用の際は金属の留め金部分をバックルに挿入し、ベルトを引っ張って固定させます。他のシートベルトと同じ作りになっておりますので、この操作がわからない方は保護者/介護者なしでは公共の場に行かれないほうがよいと思われます」

本当にあったユーモアあふれる飛行機の機内放送いろいろ:らばQ